
ふるさとをうたうプロジェクト
2017年 応募作品
2017年に応募頂いた作品の一部をご紹介します
父の死に 「こうへい」さんと 呼びかける 「こうへい」さんこそ 母の青春
石巻市 佐藤哲美さん
私ももう66歳のおじいさんになりました。短歌は9年前、病床で父の看病をしていた母の姿を思い出して詠んだものです。目を落とす寸前の父の耳元に顔を寄せて「こうへいさん、もう一回声を聞かせて」とお袋が呼びかけたのです。そこは息子の私でも入っていけない場所でした。
あんべ 光俊
ご両親が交わされてきた愛情の深さを感じさせてくれる作品。こんなカップルになれたらいいですね。
夏の海 戻ってこいよ 僕たちも 明日に向かって がんばるからな
陸前高田市立高田第一中学校 柴田 空さん
故郷の海に思いを込めて書きました。将来は復興に関わっていきたいです。
あんべ 光俊
震災後の海に抱く特別な感情。それでもやはり海とともに未来へ向かって歩んで行こう、柴田さんの逞しさ、決意が伺えて勇気づけられますね。
はじまりは 青ジャージ・マウンドの 君に重ねる あの頃の僕
陸前高田市立高田第一中学校 佐々木康佑さん
一つ下の後輩と一緒に練習を始めた頃、後輩が着ていたのは学校のジャージだった。去年の僕を見るようでした。
あんべ 光俊
初めてできた後輩とのキャッチボール。少し大人になった喜びと一年前の初々しい自分を懐かしむ気持ちがよく表れていますね。
秋の夜 海越え届く 父の声 やさしく強き 僕への思い
陸前高田市立高田第一中学校 菅野ブルースさん
僕が日本に来たのは5年前の秋。その頃、お父さんと電話で話した時の懐かしい思い出を書きました。
あんべ 光俊
生まれ た場所を遠く離れて暮らし始めた頃、電話口で聞こえるお父さんの声にどんなに勇気付けられたことでしょう。
変顔を している君が すごくイイ 犬を抱いてて 笑ってる君も
仙台市 庄司匡貴さん
5月ごろ、犬の散歩をしていたら、10数年振りに幼馴染(女性)に会いました。会うや否や彼女が私の飼い犬に向かって変顔をしてあやしてくれて、その時の顔と笑顔が夕暮れと相まってきれいに見えました。大人になった彼女の中に幼稚園時代の少女を見て、懐かしいようで、でも初めて会ったような不思議な気持ち、書き留めてみました。
あんべ 光俊
彼女が変顔をするって相当自分に対して気を許しているか気にしていないかですよね。この「まったく関係ねー」状態を切り開く彼女、興味が湧きますね。
君とみる はかなき思い出 夏花火 このまま時間が とまればいいのに
陸前高田市立高田第一中学校 阿部光海さん
一緒にいる時間がとても幸せで、この時間がとまってほしい願う気持ちを詠みました。
あんべ 光俊
光海さん素敵なお名前ですね。高田の花火といえば「けんか七夕祭り」の後で行われる花火大会。今はない気仙町の風景。僕 も10数年前に友人たちと夜空を見上げました。花火は記憶に残りますね。切ない思いが伝わります。
このグループホームが良いネと 母が言ったから 今日は独立記念日
仙台市 MSさん
震災前からうつ病を患っていた母の世話で定職につけずにいた私。自分の人生も終わったと思っていた時、震災に遭遇。津波に飲み込まれる家を見て、長年の本家の嫁としての呪縛から解き放たれた母。一人の女性としてようやく独立が叶った日でした。そしてそれは私の記念日にもなりました。
あんべ 光俊
元歌があまりに有名で取り上げるか迷いましたが、短歌の背景を知ると味わいが増します。「うたう短歌」は決して短歌自体のクオリティを競うものではありません。歌にしたい、歌にしたらどうだろう、と二人の作者の思いが深 く重なった時にメロディが生まれるのです。
あの日から ケンカしたまま 時は過ぎ あやまることも できないままに
陸前高田市立高田第一中学校 熊谷海音さん